不動産投資ガイド|不動産競売で考える不動産投資

不動産競売で考える不動産投資
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  • 2011.8.26

第四回|競売を取り下げてもらい、任意売却で購入するために

不動産競売物件は、年々物件の質も向上しています。魅力的な一棟物であれば、多くの方が任意売却で購入したいと思うでしょう。しかし、競売申立をした債権者は費用と手間を費やしていることから、簡単に競売を取り下げてはくれません。多くの投資家との競争の上、債権者に取り下げてもらい、任意売却で購入するためにはどのようにすればよいでしょうか。

 
不動産投資家はどうしても手に入れたい物件が出てきたとき、落札できるかわからない一般競争入札ではなく任意売却で確実に購入する方法を選択します。しかし、この任意売却は簡単にまとめられるものではありません。素人ではもちろん無理ですし、業界のプロでも成功させるのは難しいです。
 
権利関係は物件によって千差万別ですので、ここでは、当社のこれまでの経験を踏まえた任意売却に向けての戦略を事例と共に解説します。
 
 
直接、債権者と債務者と話し合う

当社では、これだ!という一棟物競売物件が出た場合、必ず債権者と債務者双方に直接コンタクトをとります。アポイントを取ること自体に時間がかかることもありますが、現在の状況を直接聞き出すことは、無駄な情報や誤った情報に振り回されることがなくなります。アポイントが取れたら、根気強く通うことで書類からはわからない様々な内部事情が見えてくるものです。

例えば、債務者側の代理人であることを主張する人が、
 
・債権者の事情を無視して成立しそうにない内容で任意売却の話を仕切っている。

・任意売却ではそもそも解決できないような多額の借金や
 税金の滞納を抱えているにもかかわらず、その現実を無視して任意売却の話を進めている。
 
という場合がありました。
 
しかし、債権者に直接事情を聞くと、その代理人であると主張する人の話には従わなくていいとのこと。最終的に任意売却を成立させるためには、債務者本人の同意が必要なのです。そのためには、直接債務者ご本人の気持ちを確かめなければなりませんし、「あなたに売ってもよい」と思ってもらえる必要があるります。弁護士や代理人が任意売却を成立させるために、債務者と債権者の全てをまとめてくれると思い違いしてはいけません。
 
 
お金の問題だけで債務者が喜んで任意売却に合意するわけはない
 
任意売却で一棟物の競売物件を購入しようとする人と話をしていると、お金の問題が解決すれば、債務者が任意売却にすぐ合意してくれるものと勘違いしている人が多いです。
 
「一般競争入札で第三者に落札されてしまうと、引越し代もでないで追い出されますよ」
「任意売却で引越し代をもらって新しい人生をスタートさせた方がいい!」
 
ということをおっしゃいます。実にその通りなのですが、それは買主側の都合であって、債務者の事情は考えていません。債務者には、その不動産に対する深い思い入れや、お金の問題だけでは立ち退きできない理由があるものです。まるで、借金の取り立てのように債務者を追い詰めるような任意売却交渉からスタートしてしまいますと、
 
「あなたにだけは売りたくありません!」
 
と債務者に言われるのが関の山です。一度嫌われてしまいますと、その後にどんなに高額な購入申込をしても、どんなに弁護士にお願いしても決して債務者は振り向きません。競売になった債務者であっても、売主には変わりないのです。売買には売主の合意と署名・捺印がなければ、任意売却は成立しません。
 
 
債権者の思惑を読み取る
 
では債権者はどう思っているのか。
 
一番は少しでも多くのお金を回収したいということです。お金を貸していれば当然です。ですから、債権者は、任意売却と一般競争入札を同時進行させつつ、どちらがより多く貸したお金を回収できるかどうか見極めることになります。一般的に、一般競争入札よりは、任意売却の方がより多く回収できると思われます。※物件や経済状況によっては、逆転する場合もあります。
 
では、債権者はより多く貸したお金を回収できる可能性が高い道(任意売却)を必ず選択するかといえば、そうでもありません。
 
債務者が絶対に売らないと主張したり、債務者が行方不明であったり、思い詰めていて交渉にならないなどの理由により任意売却の成立が難しそうである場合は、一般競争入札を選択する場合があります。
 
また、任意売却を成立させるための、債権者側(例:競売申立した金融機関の支店担当者)の手間やストレスも関係します。債権者側は、さまざまな買主及びその仲介者である不動産業者に対して、できる限り平等に応対する必要があります。ところが、買主側は必ずしも紳士的な交渉をしてくるわけではなく、なかには威圧的に債権者に損切を迫る業者も存在します。債権者にとって任意売却をするための手間や時間、ストレスが甚大である場合、回収金が少なくなっても一般競争入札を選択する可能性もあります。
 
買主側の思い入れが強くても、債権者側(金融機関)は、その物件以外にも数多くの不良債権担保不動産の処理を行いつつ、新規融資先を発掘し、融資残高を積み上げていかなければなりません。金融機関側にも、支店担当者にもノルマがあります。そういった債権者の思惑を無視して、債権者ストレスを課した任意売却交渉をしていると、
 
「あの物件は一般競争入札で処理することになりました」
 
と金融機関側から断られることに繋がりかねません。
ただし、債権者としては基本的に貸したお金をより多く回収できる道を模索するのは当然です。仮に債務者が行方不明であっても、債権者側が動くことなく、より多くお金を回収できるような買主や仲介業者が任意売却に必要な手続やプランをアレンジしてくれるのであれば、前向きに話に乗ってくれるでしょう。
 
 
長期にわたる任意売却交渉は、交渉人であるアレンジャー次第

任意売却交渉は長期にわたります。場合によっては 不調に終わる場合もあります。任意売却ではなく、あえて一般競争入札の道を選択した方がベターであるという結論に至る場合もあります。その見極めには時間を要するものです。開札日の直前まで結論が出ない場合もあるのです。

債務者側は、様々な事情があって返済できない借金を背負ったわけです。債務者の気持ちを考慮しつつ、その後の再生への道を支援することを含めて任意売却のお話を粘り強く進めることが重要です。単にお金の解決法を提示するだけではなく、債務者の気持ちになって再生プラン(代替案)を提案すること、それが、複雑な債権債務関係をひも解くための最も近道であると思います。
 
それと同時に、債権者側の事情も尊重する必要があります。債権者側は仮に競売取下げをした後、買主側が購入をやめたとか、融資が付かずに購入できなかったという事態になれば、管理部門や支店担当者の責任問題にもなりかねません。
 
したがって、任意売却を成功させる為に、
 
1.債務者(弁護士の場合あり)の合意
2.債権者(複数存在する場合あり)の合意
3.買主の合意
 
この三者が合意できる確実な着陸地点を探すこと。どれか一つでも欠けてはいけません。その為に私たちは「任意売却アレンジャー」として水面下で様々な可能性を日々探っているのです。