不動産投資ガイド|一棟物を狙う不動産投資ガイド

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  • 2011.5. 2

第五回|一棟物不動産投資のリスク その4「賃料設定編」

購入価格を決定する上では、販売資料やネット上に公開されている各種賃料データなどを元に精査することが多いと思われますが、ここに大きな落とし穴があります。

前回は、高額になる一棟物不動産投資の価格決定プロセスについて記載しました。話をわかりやすくするために、

部屋数50戸、「平均賃料+管理費」が10万円
※満室時の想定月額収入=500万円/月 満室時の想定年間(12ヶ月)収入=6,000万円/年

の一棟物賃貸マンションを例にとりました。利回りについては、

・販売当初の売主希望利回り:8%
・こちら側からオファーした利回り:10%

→では間をとって9%で・・・

6,000万円(満室時の想定年間収入合計)÷9%(希望する想定表面利回り)
 =約6億6,666万円

という価格で売主と交渉が成立しましたね。当初希望販売価格(7億5千万円)から、8千万円以上のディスカウントができたことになります。

「買主さんは交渉上手ですね!「買主さんの熱意に負けました!」などの美辞麗句を売主側(特に不動産業者)から並べられた挙句、売主側から売却OKが出てしまうのも、一棟物不動産投資の価格決定プロセスの実態です。

「8千万円以上もディスカウントさせたこの買主は、一棟物不動産投資のプロだ」
「一棟物不動産投資っていい加減だな・・・私にもできる!」

と思った方もいるでしょう。そういった方は特に、以下の記事をじっくりとお読みいただくことをおすすめします。


想定賃料設定の甘さは、購入価格を間違う大きな原因に

投資期間が長期にわたるのが一般的な一棟物投資です。ではこの例で、

満室時の想定月額収入=500万円/月 → 450万円/月 (50万円/月の収入減)
満室時の想定年間(12ヶ月)収入=6,000万円/年 → 5,400万円/月

というように、賃料収入が減少してしまうとすれば価格についてはどうなるでしょうか。

5,400万円(満室時の想定年間収入合計)÷9%(最終的に決定した希望の想定表面利回り)
 =6億円

となります。逆に、売主側からOKがでた購入価格(約6億6,666万円)が、約6,666万円も高かったことになります。当初の希望利回り(10%)で計算しますと、

5,400万円(満室時の想定年間収入合計)÷10%(希望する想定表面利回り)
 =5億4000万円

となりますから、約6億6,666万円- 5億4000万円 = 約1億2,666万円も高くなります。

満室時の想定月額収入が50万円も下がるとはナンセンス・・・と思わないでください。この事例では、50戸の賃貸マンションですから、各部屋平均の賃料が10万円→9万円に下落しただけで満室時の想定月額収入に50万円の違いが生まれます。

10万円の家賃を支払って賃貸マンションを借りる方々は、毎月それなりの収入があるサラリーマン世帯や、社宅用として契約する大手企業などが想定されます。10万円の家賃を払い続けることができるサラリーマン世帯は、世界でも例をみない低金利状況もあり、戸建住宅や分譲マンションを購入して退出する可能性が高いです。現に大手企業は社宅契約をどんどん打ち切っています。

したがって、この家賃相場の賃貸マンションは空室率が高くなる傾向になります。募集賃料が10万円前後の賃貸マンションにおいては、実際に契約した成約賃料が9万円、あるいは8万円台に下落することは珍しくありません。また、数十部屋単位で社宅契約していた大手法人に退出されてしまいますと、一気に空室率が高くなるため合計賃料収入も一気に下落します。


実際の賃料は販売資料や公開資料に反映されているわけではない

販売資料に記載の想定賃料は、できるだけ高く記載した方が合計賃料が増え利回りも高くなるため当然目いっぱい高く記載されています。安く売りたい売主はまずいませんので、想定賃料は、実際の賃料ではなく新築時の賃料をベースに作成されるでしょう。

最近売買市場に頻繁に登場する、

・平成バブル期(平成元年前後)
・平成8年前後(平成バブル崩壊後、一時的に経済が回復傾向をみせた時期)

に建築された一棟物は、新築時からの入居者の賃料はいまだに当時のものだったりしますが、現在の賃料は、2割〜3割ほど安くなってたりします。

また実際の賃料は、ネット上に公開されている各種賃料データなどに反映されているとは限りません。理由は、ネット上の公開資料を既存の入居者さんが目にする可能性があるからです。これだけ空室が多い不動産賃貸市場ですから、空室にするくらいであれば多少賃料をディスカウントしてでも入居してもらいたいというのが、一般的なオーナーさんの心境でしょう。

では、既存の入居者さんは、自分より安い賃料で大々的に募集されたらどうでしょう? 「私の賃料も安くしてください!」と連絡するかもしれません。それが一人二人ではなく、なし崩し的に連絡があると、もう収集がつかなくなります。安易にディスカウントしたところ、実はマンション内でコミュニティが構築されていて「あのお部屋が安くなったんだから、うちも」と。ですから、公開資料には実態賃料を掲載しにくいのです。

また、大手シンクタンクがネット上で公開している賃料相場データは、実際の賃料ではないことが多いです。(現在の実態賃料とは異なる旨、きちんと記載している場合もあると思いますので、資料の注意書きにはしっかりと目を配りましょう。)

私たちは、インターネットで流通している情報だけで不動産賃貸市況を判断しているわけではありません。自社で保有している一棟物不動産や、オーナーさんから依頼された一棟物不動産を管理しているので、賃貸マンションが立て続けに解約になったり、家賃交渉を迫られるなどの日々の実務経験から、現在の不動産賃貸市場が楽観視できる状況ではないことを痛いほど肌で感じています。

不動産賃貸市場は、いわば「生き物」であるということを、忘れてはいけません。販売資料やネット上に公開されている各種賃料データだけで一棟物不動産に投資することは、とてもリスクが大きいです。「そのくらいはわかっているよ・・・」と皆さんは思われるかもしれませんが、いざ一目惚れするような立地、外観の物件が目の前に登場した瞬間、意外と判断が甘くなるものです。

投資するための余剰資金がだぶついているという話であれば別ですが、一般的には数百万円でも安く購入できれば、投資後に屋上防水工事などにその差額を投入できますし、数千万円違えば購入する一棟物の外装をやりかえて資産価値を高めることも出来るので、購入価格設定は(当然ではありますが)シビアに行うべきです。

なお、投資期間が長期にわたる一棟物不動産へ投資する上では、実際の賃料の精査は、なにも投資前の価格決定時のみ行えばよいというわけではありません。一棟物不動産を手に入れた後も、空室率を下げる為にも、以前の記事(一棟物不動産投資のリスク その2「管理会社編」)でも述べましたが、できるだけ管理会社との良好な関係を構築し続け、管理会社スタッフから適時賃貸事情の敏感な動きを察知するような経営感覚も大切ですね。


次回は、一棟物不動産オーナーになってハッピーな気持ちになりはじめた途端、「まさか、こんなことが・・・」という事態が発生し、奈落の底に落とされるがことく、せっかく手に入れた一棟物があっという間に差し押さえされてしまうリスクについて記載します。

次回に続く